【医師が解説】肥満症は「努力不足」ではない?社会で向き合うべき慢性疾患としての最新動向

ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
JR明石駅より徒歩5分、明石やまだ内科歯科クリニック院長の山田恭孝です。
先日、肥満症治療に関する非常に画期的なニュースが報じられました。
製薬企業と国立健康危機管理研究機構(JIHS)、国立循環器病研究センターといった公的研究機関が協定を結び、国や学会を挙げて「産官学連携」で肥満症対策を進めていくという内容です。
なぜ今、国レベルでこのような取り組みが強化されているのでしょうか。そこには、これまでの「肥満に対する誤解」を解き、適切な医療を届けるための重要なメッセージが込められています。
今回は、日本肥満学会に所属する専門医の視点から、このニュースの背景と「肥満症の本当の姿」について解説します。
■ 肥満症は「個人の自己管理の問題」ではありません
肥満症に対して、多くの方が「食べ過ぎ」「運動不足」「努力が足りないからだ」といったイメージを持たれがちです。患者さんご自身も「自分の甘さが原因だから」と責めてしまい、医療機関への受診をためらってしまうケースが後を絶ちません。
しかし、最新の医学では、肥満には多くの遺伝的要因や、食欲・代謝をコントロールする生理的な機能の異常、さらには社会的・経済的な背景が複雑に絡み合っていることが明らかになっています。本人の「気合い」や「努力」だけで左右できる部分はごく一部に過ぎません。
肥満症は、個人の責任(自己管理の問題)ではなく、医学的な治療が必要な「慢性疾患」です。こうした正しい理解を社会全体で共有し、患者さんに対するスティグマ(偏見)を払拭することが、今まさに求められているのです。
■ 全身の臓器に影響を与える「臓器連関」の怖さ

肥満症は単に体重が重い状態を指すのではありません。「BMIが25以上で、肥満に起因する健康障害がある(または予測される)状態」と定義されています。
今回の公的研究機関との共同研究でも注目されているのが、肥満が他の臓器に与える深刻な影響です。これを「臓器連関」と呼びます。
・肥満と腎臓の関係:肥満環境下では、慢性腎臓病(CKD)の発症や重症化リスクが高まり、末期腎不全に至る危険性があることが分かっています。
・肥満と心臓の関係:脂肪細胞からは体に悪影響を及ぼす物質(アディポカイン)も分泌され、これが高血圧や心筋梗塞、心不全、心房細動といった循環器疾患を直接的に引き起こす要因となります。
つまり、肥満症という根本の「根っこ」を治療することで、それに付随して起こる糖尿病、腎臓病、心臓病といった多くの疾患をまとめて改善できる可能性があるのです。
■ 「科学の遅れ」を取り戻す新しい治療の時代へ

これまでの肥満症治療は食事療法や運動療法が中心であり、うまくいかないと「努力不足」で片付けられがちでした。しかしそれは、患者さんのせいではなく、「良いお薬がなく、科学がまだ追いついていなかったため」と言えます。
近年、消化管ホルモンの働きを応用した新しい治療薬が登場するなど、医学的根拠に基づいた肥満症治療は劇的な進化を遂げています。今回の産官学連携の取り組みにより、実際の診療データに基づいた治療薬の価値評価や、基礎研究によるメカニズムの解明がさらに進むことが期待されます。
■よくあるご質問(Q&A)

Q1:肥満症の診断基準について教えてください。
A: 日本ではBMI(体重kg÷身長mの2乗)が25以上で、肥満に関連する健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)がある場合、または内臓脂肪の蓄積がある場合に「肥満症」と診断され、医学的な治療の対象となります。
Q2:肥満症の新しいお薬とはどのようなものですか?
A: 近年、食欲を抑えたり、胃の働きをゆっくりにして満腹感を持続させたりする働きを持つお薬(GLP-1受容体作動薬など)が登場し、肥満症治療の選択肢が大きく広がっています。適応基準を満たした患者様に対し、医師の管理のもとで安全に処方いたします。
Q3:肥満の相談で病院に行くと、どのような検査をしますか?
A: 当院では、身長・体重・腹囲の測定、血圧測定に加えて、詳しい血液検査を行います。院内に迅速血液検査機があるため、脂質(コレステロールや中性脂肪)やHbA1c(糖尿病の指標)、肝機能などの数値を最短15分程度で確認でき、その日のうちに詳しいご説明と治療方針のご提案が可能です。
Q4:運動する時間がとれないのですが、痩せられますか?
A: 運動も大切ですが、肥満治療の基本は食事の改善です。極端な食事制限ではなく、まずは「よく噛んで食べる」「食べる順番(野菜から)を意識する」といった無理のない工夫からスタートします。当院では患者様のライフスタイルに合わせたアドバイスを行っています。
Q5:肥満予防に「よく噛むこと」が大事とのことですが、歯科ではどのようなサポートが受けられますか?
A: 「早食い」や「丸飲み」は満腹感を感じにくくさせ、肥満の大きな原因となります。しっかり噛んで食べるためには、むし歯や歯周病のない健康な歯が欠かせません。当院は「内科・歯科併設クリニック」ですので、歯科で「しっかり噛める健康なお口の環境」を整え、内科で肥満症や生活習慣病の予防・管理を行う「医科歯科連携」によるトータルサポートが可能です。
■ おわりに:肥満のお悩みは一人で抱え込まず専門医へ

肥満症は、社会全体で向き合い、医療の力で解決していく病気です。「体重のことで病院に行ってもいいのだろうか」と悩む必要は全くありません。
当院では、日本肥満学会に所属する専門医として、一人ひとりの体質やライフスタイルに寄り添い、最新の知見に基づいた生活指導や薬物療法など、無理のない減量・体質改善をサポートしております。
また、当院は歯科を併設しており、食事の基本となる「しっかり噛む力」を維持するための歯科治療・メンテナンスも同時に受けていただけます。
健康診断で数値の異常を指摘された方、体重増加やそれに伴う体調不良でお悩みの方は、決してご自身を責めず、明石やまだ内科歯科クリニックへお気軽にご相談ください。