【医師が解説】SNSで話題の「マンジャロ」ダイエットの危険性と、肥満症治療の本当のところ

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JR明石駅より徒歩5分、明石やまだ内科歯科クリニック院長の山田恭孝です。
最近、SNSなどで「簡単に痩せられる魔法の薬」として「マンジャロ」というお薬の名前を耳にしたことはありませんか?
若い世代を中心に、美容やダイエット目的での使用が急増しており、連日ニュースでも取り上げられています。先日、厚生労働省からもこうした「適応外使用」に対して強い注意喚起が行われました。
日本肥満学会に所属する内科医として、この現状には強い危機感を抱いています。今回は、マンジャロの本来の役割と、美容目的での使用がなぜ危険なのか、そして「本当に治療が必要な肥満症」について詳しく解説します。
■ 「カンタンに痩せる魔法の薬」ではありません

まず大前提として、マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は「2型糖尿病」の患者様のために開発・承認された治療薬です。決して、健康な人が手軽に痩せるためのダイエットサプリではありません。
なぜダイエット目的で使われるようになったかというと、このお薬には血糖値を下げる効果に加えて、脳の満腹中枢に働きかけたり、胃腸の動きを緩やかにして食欲を強力に抑えたりする作用があるためです。
しかし、本来の目的以外で使用した場合、思わぬ健康被害を引き起こす危険性があります。
代表的な副作用として、使い始めの強い吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状があります。さらに恐ろしいのが、健康な人が使うことで起こる「低血糖」や脱水、重症化すると「急性膵炎(すいえん)」を引き起こすリスクです。
また、美容目的の自由診療や個人輸入などでこのお薬を使い、万が一重篤な副作用が出た場合、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となってしまう可能性が極めて高く、すべて自己責任となってしまいます。BMIが正常な方や痩せ型の方が、さらに体重を落とすために使用することは、医師として絶対におすすめできません。
■ 「肥満症」で苦しむ方にとっては画期的な治療薬

一方で、このニュースを聞いて「薬で痩せるなんてズルい、危険だ」と、すべてを否定的に捉えてほしくないというのも、肥満治療に携わる医師としての本音です。
ただ、あえて適応外使用となるマンジャロを使用しなくとも「ウゴービ」「ゼップバウンド」という薬が肥満症の治療薬として保険適応されています(※高血圧や脂質異常症などを合併しており、厳しい条件を満たす重度の肥満症患者様に限られます)。
肥満は、ご本人の「意志の弱さ」や「甘え」ではなく、脳の食欲コントロール機能などが破綻してしまっている状態です。これまでの生活習慣を変え、我慢して食事を半分に減らすのは至難の業です。
しかし、このお薬を適切に使用すると、自分の「満腹のタンク」自体が小さくなったように感じ、少量の食事で自然と心から満足できるようになります。我慢のストレスなく体重を落とすことができるため、本当に肥満症で命の危険(脳梗塞や心筋梗塞など)を抱えている患者様にとっては、劇的に状態を改善できる希望の光なのです。
■ 肥満は「放置してはいけない病気」です
「ちょっと太っているだけだから」と肥満を放置していると、糖尿病をはじめ、睡眠時無呼吸症候群、さらには一部のがんのリスクまで高めてしまいます。肥満は立派な病気であり、早期の医療介入が必要です。
SNSの不確かな情報に流されて安易にお薬に手を出すのではなく、ご自身の体重や健康状態に不安がある場合は、必ず専門医にご相談ください。
■よくあるご質問(Q&A)

Q1:肥満の治療で病院に行くと、どのような検査をしますか?
A: 当院では、身長・体重・腹囲や血圧の測定に加えて、詳しい血液検査を行います。院内に迅速血液検査機が常設されているため、糖尿病の指標となるHbA1cや脂質、肝機能などの数値を最短15分程度で確認でき、その日のうちに詳しいご説明と治療方針のご提案が可能です。
Q2:糖尿病ではないのですが、マンジャロなどの薬を処方してもらえますか?
A: マンジャロは2型糖尿病の治療薬であるため、ダイエット目的での処方は行っておりません。ただし、厳しい適応基準(BMIの基準や高血圧などの合併症の有無)を満たす「肥満症」の患者様に対しては、適切な治療薬(ウゴービやゼップバウンドなど)の使用は検討の余地はあります。
Q3:薬を使えば、食事制限や運動はしなくていいのですか?
A: お薬はあくまで治療の「サポート役」です。お薬で食欲をコントロールできている間に、「よく噛んで食べる」「適度に体を動かす」といった正しい生活習慣を身につけることが、治療の最大の目的となります。
Q4:健康的に痩せるための食事のコツはありますか?
A: 当院では「カーボラスト(炭水化物を最後に食べる)」を推奨しています。食事の最初に野菜や海藻、次にお肉やお魚を食べ、最後にご飯やパンを食べることで、血糖値の急上昇を防ぎ、脂肪を溜め込みにくくする効果があります。
Q5:ダイエットと「お口のケア」はどう関係しているのですか?
A: 「早食い」や「丸飲み」は満腹感を感じにくくさせ、肥満の大きな原因となります。しっかり噛んで食べるためには、むし歯や歯周病のない健康な歯が欠かせません。当院は「内科・歯科併設クリニック」ですので、内科で肥満症や生活習慣病の予防・管理を行いながら、歯科で「しっかり噛めるお口の環境」を整える「医科歯科連携」のトータルサポートが可能です。
■ おわりに:医科歯科連携で正しい健康づくりを

当院では、日本肥満学会に所属する専門医が、患者さま一人ひとりの体質や血液データに基づき、医学的に正しいアプローチで肥満症や生活習慣病の治療をサポートしております。必要と適応があると判断した場合には、安全な管理のもとで適切なお薬の処方も行います。
また、健康的なダイエットの基本は「よく噛んで、ゆっくり食べること」です。当院は歯科を併設しておりますので、内科での治療と並行して、しっかり噛める健康なお口の環境づくりもトータルでお任せいただけます。
体重のコントロールがうまくいかない、健康診断で異常を指摘されたという方は、一人で悩まず、どうぞお気軽に明石やまだ内科歯科クリニックへご相談ください。