【内視鏡専門医が解説】松本人志さんの大腸がんの経緯と、見えてくる早期発見の重要性

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JR明石駅より徒歩5分、明石やまだ内科歯科クリニック院長の山田恭孝です。
先日発表されたニュースに衝撃が走っています。
ダウンタウンの松本人志さんは今春、体の異変を感じて医療機関を受診。大腸に腫瘍が発見され、切除手術を受けたとのことです。本人は緊急生配信の中で「血便が止まれへんって言ってたでしょ。病院行ったら、めちゃめちゃがんやってん」と語り、腸を一時的に体外に出す処置(人工肛門造設)が必要だったことも明かされました。
吉本興業の公式発表では「大腸の腫瘍切除手術」と表現されましたが、本人は「がん」と明言し、「死ぬかと思った」と述べるほどの大手術だったといいます。
血便という症状が出て初めて受診する、という経過は、残念ながら大腸がんの典型的なパターンです。大腸がんは早期の段階では、ほぼ無症状で進行するという性質があります。血便や便通異常などの自覚症状が出たときには、ある程度がんが育ってしまっている可能性が高いのです。
■ 大腸がんは、なぜ「気づいたとき」に進行しているのか

がんは、粘膜の内側から少しずつ育っていきます。大腸の壁は外側に向かって粘膜層→粘膜下層→固有筋層→漿膜(しょうまく)という層になっており、がんがどの層まで達しているかでステージが決まります。
ステージI(粘膜下層にとどまる)の段階では、腸の内側の変化はわずかなため、腸の動きや分泌機能はほぼ正常です。そのため便通や便の形状に大きな変化は起きにくく、当然ながら血便も出ない場合がほとんどです。
ステージが進むにつれて腫瘍が大きくなり、腸の内腔が狭くなってくると、便が細くなる・残便感がある・排便のたびに不快感がある、などの症状が出てきます。さらに腫瘍の表面が傷つき出血するようになって、はじめて血便として気づくケースが多いのです。
つまり、血便が出た時点ではがんがすでにある程度のサイズに育っていると考えた方がよく、これは大腸がんの早期発見を難しくする最大の要因となっています。
■ 60代男性は特に注意が必要な理由

松本さんは現在62歳。じつは大腸がんの罹患率は、50代から急増し、60〜70代でピークを迎えます。さらに男女で比べると、男性の罹患率は女性の約1.5倍とされています。
リスクを高める主な要因として、以下が挙げられます。
- 食生活:赤肉(牛・豚・羊)や加工肉(ハム・ソーセージ)の過剰摂取、食物繊維不足
- 飲酒:アルコールは大腸がんの明確なリスク因子。量に比例してリスクが上がります
- 肥満・運動不足:BMI高値、座位時間が長い生活習慣はリスクを高めます
- 喫煙歴:大腸がんを含む複数のがんリスクを上げます
- 家族歴:一親等(親・兄弟・子)に大腸がん患者がいる場合、リスクが約2倍
これらのリスク因子を複数お持ちの方は、症状がなくても積極的に大腸カメラを受けることを強くお勧めします。
■ 大腸カメラの本当の価値は「がんを見つける」ことではない

「大腸カメラを受ける=がんを見つける検査」と思っている方は多いと思います。もちろんがんの発見は重要な目的のひとつですが、実は大腸カメラにはそれ以上に大切な役割があります。それは、「がんになる前の段階で見つけて切除する」という予防的機能です。
大腸がんの多くは、大腸ポリープ(腺腫)という良性の病変を経て発生します。ポリープが少しずつ成長し、数年〜十数年をかけてがんに変化していくというプロセスをたどります。
大腸カメラでポリープを発見した場合、多くのケースでは検査と同時にその場で切除することができます。つまり、がんになる前に取り除いてしまうことで、将来の大腸がんを予防できるのです。
当院では1万件以上の大腸カメラ実績を持つ消化器内視鏡専門医・指導医が担当し、発見したポリープは形態・大きさを評価したうえで、その場での日帰り切除にも対応しています。
■ よくあるご質問(Q&A)

Q1:大腸カメラはどのくらいの頻度で受ければいいですか?
A:リスクのない方であれば、最初に一度受けて異常がなければ3〜5年に1回が目安です。ただし、ポリープが見つかった場合や家族歴がある場合は1〜2年ごとの受診が推奨されます。また、便潜血検査で「陽性」が出た方は、すみやかに大腸カメラ(精密検査)を受けてください。
Q2:大腸カメラは痛くないですか?怖くて踏み出せません。
A: 当院では、患者様の苦痛を最小限に抑えるため、鎮静剤を使用してウトウトと眠っているようなリラックスした状態で検査を行っています。また、検査後のお腹の張りを軽減する「炭酸ガス(CO2)送気」も導入しているため、検査後の不快感もほとんどありません。内視鏡は2名いる内視鏡専門医が担当させていただきます。「以前の検査がつらかった」という方も、ぜひ一度ご相談ください。
Q3:便潜血検査(健康診断)で「陰性」でした。それでも受けた方がいいですか?
A:便潜血検査はスクリーニング(ふるい分け)の検査ですが、感度は100%ではありません。がんやポリープがあっても、たまたまその検体に出血が含まれていなければ「陰性」となることがあります。特に50代以上で、これまで一度も大腸カメラを受けたことがない方には、便潜血検査の結果にかかわらず、一度は大腸カメラを受けていただくことをお勧めしています。
Q4:「まだ若いから大丈夫」と思っているのですが、40〜50代でも受けた方がいいですか?
A:40代から大腸がんの罹患率は上がり始めます。特に、赤肉・加工肉をよく食べる、飲酒習慣がある、BMI高値、運動不足、家族歴がある、といったリスク因子が重なる場合は、40代からの受診をお勧めします。実際に当院でも、40代のポリープ発見・切除は珍しくありません。
Q5:大腸カメラ前日の食事制限が心配です。仕事が忙しくても受けられますか?
A:当院では、できる限り患者様のご都合に合わせたスケジュールで検査を組んでおり、お忙しい方には「胃カメラと大腸カメラの同日検査」もご案内可能です。前日の食事は消化のよい低残渣食(白いご飯・うどんなど)であれば制限は少なく、当日の下剤も院内で服用いただける専用個室を完備しています。まずはお気軽にご相談ください。
■ おわりに:松本さんの経験が「受診のきっかけ」になってほしい

著名人が病気を公表するたびに、私は「これを機に一人でも多くの方が検査を受けてくれれば」と思います。松本さんが大腸がんを乗り越えて活躍される姿は、同世代の方々に大きな勇気を与えるでしょう。そして、この報道がご自身の腸の健康を見直すきっかけになれば、医師としてこれ以上うれしいことはありません。
当院は消化器病専門医、消化器内視鏡専門医・指導医が在籍し、大腸カメラや胃カメラをはじめ、超音波内視鏡(EUS)による膵臓・胆道の精密検査にも対応しています。また、当院の特徴として歯科を併設しており、口腔内の歯周病菌(フソバクテリウム)が大腸がんの増殖に関与するという最新の研究知見をふまえ、内科・歯科が連携した腸の健康管理をご提供しています。
「一度も大腸カメラを受けたことがない」「気になる症状があるけれど受診できていない」という方は、ぜひお早めにご相談ください。