電車で急にお腹が痛くなる…その症状、過敏性腸症候群(IBS)かもしれません

「通勤電車で急にお腹が痛くなる」
「大切な会議の前に限って下痢をする」
「便秘と下痢を繰り返してお腹がスッキリしない」
このようなお腹の不調が続いているにもかかわらず、検査をしても「特に異常はありません」と言われた経験はありませんか?そのつらい症状は、過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。
IBSは命に関わる病気ではありませんが、日常生活の質(QOL)を大きく低下させてしまう、非常につらい病気です。決して「気のせい」や「体質」で片付けず、適切な治療で症状をコントロールしていきましょう。
過敏性腸症候群(IBS)とは?

過敏性腸症候群(IBS)とは、大腸カメラなどで調べても潰瘍や炎症といった目に見える病気がないにもかかわらず、腹痛や、下痢・便秘などの便通異常が慢性的に続く病気です。
原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレスや不安を感じると、脳から指令が出て腸の動きが過剰になったり(脳腸相関)、腸が刺激に対して非常に敏感になったりすることで症状が引き起こされると考えられています。
特徴的なこととして、「夜、寝ている間に症状で目が覚めることは稀」という点が挙げられます。
こんな症状はありませんか?IBSセルフチェック
以下の項目のうち、複数当てはまる場合はIBSの可能性があります。
- 数ヶ月にわたって、腹痛や腹部の不快感が繰り返し起こる
- 腹痛は、排便をすると一時的に楽になることが多い
- 症状が出始めた頃から、排便の回数が変わった(増えた、または減った)
- 症状が出始めた頃から、便の形が変わった(硬くなった、または軟らかくなった)
- お腹がゴロゴロ鳴ったり、ガス(おなら)が溜まって張ったりする
- ストレスを感じると症状が悪化する
- 仕事や学校のある平日は症状が出やすいが、休日は比較的楽だ
IBSの主なタイプ
IBSは、主な症状によって大きく3つのタイプに分けられます。
1, 下痢型
突然の激しい腹痛と、水のような下痢が特徴です。急な便意に襲われるため、外出や乗り物に乗ることに不安を感じる方が多く、若い男性によく見られます。
2, 便秘型
腸がけいれんし、ウサギのフンのようなコロコロとした硬い便になります。強くいきまないと出ず、排便後もスッキリしない(残便感)のが特徴で、女性に多い傾向があります。
3, 混合型
下痢と便秘を数日おきに交互に繰り返します。
診断:なぜ検査が必要か?
IBSの診断で最も重要なのは、「症状の原因となる他の病気がないことを確認する」ことです。腹痛や便通異常は、潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がんといった、治療が必要な病気の症状である可能性もあります。
そのため、当院ではまず血液検査や便検査、そして必要に応じて大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行い、腸に炎症やポリープ、がんなどの器質的な異常がないかをしっかりと確認します。検査で「異常なし」と確認することが、IBSの正確な診断への第一歩となります。
治療について
IBSの治療は、一つの方法で完治を目指すのではなく、いくつかの治療法を組み合わせて症状を上手にコントロールしていくことが目標となります。
- 生活習慣の改善(基本となる治療)
まずは治療の土台として、生活リズムを整えることが非常に重要です。
- 十分な睡眠と休養: 睡眠不足や過労は自律神経を乱し、症状を悪化させます。
- 適度な運動: ウォーキングなどの軽い運動は、腸の動きを整え、ストレス解消にも繋がります。
- ストレス管理: ご自身に合った趣味やリラックスできる時間を見つけ、ストレスを溜め込まない工夫をしましょう。
- 食事療法(低FODMAP食)

近年、IBSの症状改善に有効な食事法として「低FODMAP(フォドマップ)食」が注目されています。
FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい特定の糖質の総称です。これらを多く含む食品を摂ると、腸内でガスが発生し、腹痛やお腹の張りを引き起こすことがあります。
まずは高FODMAP食を控え、症状が改善するかを確認することから始めます。
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高FODMAP食(まずは控えたい食品の例) |
低FODMAP食(安心して食べやすい食品の例) |
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パン、パスタ、うどん(小麦製品) |
米、玄米、十割そば |
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玉ねぎ、ネギ、にんにく、アスパラガス |
トマト、ほうれん草、かぼちゃ、大根、じゃがいも |
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納豆、豆乳(大豆製品) |
木綿豆腐 |
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牛乳、ヨーグルト(乳製品) |
バター、マーガリン |
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りんご、梨、桃、はちみつ |
バナナ、いちご、ぶどう |
食事療法は専門的な知識も必要ですので、医師や管理栄養士と相談しながら進めていきましょう。
- 薬物療法
生活習慣や食事を見直しても症状が改善しない場合は、お薬の力を借ります。
- 腸の動きを整える薬
- 腸内の善玉菌を増やす整腸剤(プロバイオティクス)
- 症状に合わせた下痢止めや便秘薬
- 痛みを和らげる薬(抗コリン薬など)
- 腸の知覚過敏を抑える薬(低用量の抗うつ薬など)
患者様一人ひとりの症状やタイプに合わせて、最適なお薬を処方します。
ひとりで悩まず、ご相談ください

IBSは、症状のつらさを周りの人に理解してもらえず、ひとりで抱え込んでしまう方が非常に多い病気です。ただ、日本での有病率は15%との報告もあり、7人に1人と非常に多くの方が苦しんでいる病気でもあります。適切な診断と治療によって、症状の改善が望めます。長引くお腹の不調にお悩みの方は、どうぞお気軽に当院の消化器内科にご相談ください。当院では炎症性腸疾患連携専門医が対応させていただきます。