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突然の腹痛や血便。「大腸憩室症」の原因と合併症(憩室炎・憩室出血)

「大腸憩室」は、決して珍しいものではありません。日本人では50代の約3割、70代では約5割の方に見つかると言われています。

多くの場合、憩室があるだけで症状はなく、治療の必要もありません。しかし、時に「憩室炎」という炎症や、「憩室出血」といった合併症を引き起こすことがあります。

この記事では、大腸憩室症の正しい知識と、いざという時の対処法、そして日頃からの予防法について詳しく解説します。

大腸憩室症とは?

大腸憩室(けいしつ)とは、大腸の壁の一部が、外側に向かって5~10mmほどの袋状にぽこっと飛び出した状態のことです。大腸の壁には栄養を送る血管が貫いている部分があり、その箇所は構造的に弱くなっています。便秘などによって腸の中の圧力(内圧)が高い状態が続くと、その弱い部分が外に押し出されて憩室が形成されると考えられています。

 

原因

主に食物繊維の不足による便秘、加齢に伴う腸壁の衰えが挙げられます。その他、肥満、喫煙、赤身肉中心の食生活なども関連すると言われています。

 

頻度・部位

日本人の保有率は全体で約24%とされ、年齢とともに増加します。できやすい場所は、欧米では左側(S状結腸など)が多いのに対し、日本では右側(上行結腸など)に多いのが特徴です。ただし、食生活の欧米化に伴い、日本人でも左側にできるケースが増えています。

性質

一度できた憩室は、残念ながら自然になくなることはありません。

症状について

憩室があるだけ(大腸憩室症)では、ほとんどが無症状です。多くは大腸カメラ検査などの際に偶然発見されます。

問題となるのは、憩室が原因で以下のような合併症を引き起こした時です。

  • 大腸憩室炎(けいしつえん): 憩室に便などが詰まって細菌が繁殖し、炎症を起こした状態。
  • 大腸憩室出血(けいしつしゅっけつ): 憩室内部の脆くなった血管が破れて出血した状態。

合併症:大腸憩室炎

憩室炎は、憩室出血の約3倍起こりやすいとされています。

  • 主な症状: 持続的な腹痛、発熱、下痢、吐き気など。日本人に多い右側結腸の憩室炎は、お腹の右下が痛むため、虫垂炎(盲腸)との見分けが重要になります。
  • 重症化すると: 炎症が強くなると、憩室の壁に穴が開いたり(穿孔)、膿の塊ができたり(膿瘍形成)することがあります。さらに炎症がお腹全体に広がると命に関わる「腹膜炎」になる危険性もあります。
  • リスク因子: 肥満の方は憩室炎を発症しやすく、喫煙者の方は重症化しやすいことが分かっています。

合併症:大腸憩室出血

憩室内部の血管が、動脈硬化などによって脆くなり破れることで発生します。

  • 主な症状: 腹痛を伴わない、突然の多量の血便(鮮血便)が特徴です。
  • 経過: 幸いなことに、出血の70~90%は自然に止まるとされています。しかし、繰り返し出血したり、ごく稀にショック状態になるほど大量に出血したりすることもあります。

検査と診断

症状に応じて、適切な検査を迅速に行います。

 

腹痛・発熱がある場合(憩室炎が疑われる時)

まずは炎症の程度や膿の有無を調べるため、血液検査や腹部超音波検査、腹部CT検査を行います(CTは連携病院で撮像)。炎症が強い時に大腸カメラ検査を行うと、かえって腸を傷つける危険があるためです。

そして、炎症が治まった後に、必ず大腸カメラ検査を受けていただくことを推奨しています。これは、憩室炎の症状の裏に大腸がんなどの病気が隠れていないかを確認するために非常に重要です。

 

血便がある場合(憩室出血が疑われる時)

出血源を特定し、そのまま止血処置を行うために大腸カメラ検査が第一選択となります。出血量が多い場合は、先に造影剤を用いたCT検査で、おおよその出血場所を把握することもあります。

予防と日常生活での注意点

憩室炎も憩室出血も再発しやすいため、日々の生活習慣がとても大切です。残念ながら、医学的に確立された再発予防薬はありません。

 

【予防のための食事】食物繊維を積極的に

便秘を防ぎ、腸の内圧を下げることが最大の予防策です。

根菜類(ごぼう、大根)、きのこ類、海藻類、大豆製品など、食物繊維の豊富な食品をバランス良く摂り、水分もしっかり補給しましょう。

 

【炎症中の食事】お腹に優しく

腹痛などがある急性期は、腸に負担をかけないことが第一です。

うどん、おかゆ、豆腐、白身魚、はんぺんなど、消化の良い「白い食べ物」を中心に摂り、コーヒー、香辛料、アルコールなどの刺激物は避けましょう。

 

【生活習慣の見直し】

  • 適度な運動: ウォーキングなどは腸の動きを活発にします。
  • 体重管理: 肥満は憩室炎のリスクを高めます。
  • 禁煙: 憩室炎の重症化を防ぎます。

気になる症状は放置しないでください

経験豊富な医師による専門的な治療

大腸憩室症は、多くの場合心配のいらない状態です。しかし、急な腹痛や血便は、重篤な合併症のサインかもしれません。気になる症状があれば、決して放置せず、お早めに当クリニックへご相談ください。

明石やまだ内科歯科クリニック