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【医師解説】背中の痛みや体重減少は危険のサイン? 膵臓がんの初期症状と早期発見のために知っておくべきこと


「膵臓がんは見つかりにくい」

「症状が出たときには手遅れ」

こうした言葉を聞いて、不安に思われている方もいらっしゃるかもしれません。

昨年、多くの人に愛されたお笑い芸人の今くるよさんが膵臓がんで逝去されたニュースもあり、ご自身の健康を心配されている方も多いことでしょう。

膵臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、初期には症状がほとんど出ないため、確かに早期発見は簡単ではありません。実際、日本ではがんによる死因の上位(男性4位、女性3位)を占めており、治療が難しいがんの一つとされています。

しかし、ご自身の体のささいなサインに気づき、リスクを正しく理解することで、早期発見につながる可能性は決してゼロではありません。

今回は、膵臓がんのサインとなりうる症状や、発覚のきっかけ、そして私たちがご自身の体を守るためにできることについて、お伝えします。

【そもそも膵臓とは? なぜ膵臓がんの発見は難しいのか】

膵臓の働き

膵臓は、胃の裏側にある長さ20cmほどの細長い臓器です。食べ物の消化を助ける「膵液」を分泌したり(外分泌機能)、血糖値をコントロールする「インスリン」などのホルモンを作ったり(内分泌機能)する、生命維持に欠かせない働きを担っています。

この膵臓にできるがんが「膵臓がん」ですが、その発見が難しいのには、主に2つの理由があります。

 

1.特徴的な初期症状がない

がんが小さいうちは無症状のことがほとんどです。症状が出たとしても、胃の不調など他の病気と区別がつきにくいものが多く、見過ごされがちです。

 

2.体の深い場所にある

胃や腸に隠れているため、健康診断で一般的に行われる腹部超音波(エコー)検査では、全体を隅々まで観察するのが難しい場合があります。

 

こうした特性から、膵臓がんは「21世紀に取り残されたがん」と呼ばれることもあるほど、早期発見と治療が難しいがんとされています。

【見過ごさないで!】


症状が出た時点では、がんがある程度進行している可能性もあります。しかし、これらのサインを知っておくことが早期受診につながります。以下のような症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関に相談してください。

 

  1. 腹痛・背部痛(背中の痛み)

「みぞおちのあたりが重い」「なんとなく胃の調子が悪い」といった腹部の違和感や、背中や腰の痛みが出ることがあります。特に、痛む場所は腰の上部から背骨の中央あたりで、「鈍い痛み」や「焼けつくような痛み」と感じることが多いです。夜間や食後、体を前にかがめた時に痛みが強くなるのも特徴の一つです。

 

  1. 黄疸(おうだん)

がんによって胆汁(たんじゅう)の流れがせき止められることで起こります。白目や皮膚が黄色くなる、尿の色が濃くなる(茶色っぽくなる)、便が白っぽくなる、体のかゆみといった症状が現れます。黄疸は、すぐに治療が必要な危険なサインですので、速やかに消化器内科を受診してください。

 

  1. 理由のない体重減少

特にダイエットをしていないのに、半年間で体重が5%以上減る場合は注意が必要です。がん細胞が体から栄養を奪ったり、膵液が不足して食べ物の消化吸収がうまくできなくなったりすることが原因です。

 

  1. 糖尿病の急な発症・悪化

これまで糖尿病ではなかった方が急に発症したり、これまでコントロールできていた血糖値が急に悪くなったりすることも、膵臓がんの重要なサインです。特に、糖尿病と診断されて1年未満の方は、膵臓がんのリスクが高いことが指摘されています。

 

  1. 食欲不振・吐き気・腹部膨満感

がんが大きくなることで、胃や十二指腸が圧迫されて食事が摂れなくなったり、お腹にガスが溜まったような張りを感じたりすることがあります。

【あなたは大丈夫?膵臓がんのリスク因子セルフチェック】

膵臓がんの発症には、生活習慣や遺伝的な要因が関わっていることが分かっています。ご自身に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。

  • 家族歴:血縁者(特に親・兄弟姉妹・子)に膵臓がんになった方がいる。(ご家族に3人以上いる場合、リスクは最大32倍にも)
  • 関連する病気糖尿病慢性膵炎肥満(BMI30以上)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や膵嚢胞を指摘されたことがある。
  • 生活習慣喫煙(リスクが約2倍に)、過度な飲酒

これらのリスク因子に複数当てはまる方は、特に注意が必要です。

 

【早期発見と予防のために、私たちが今できること】

膵臓がんには、胃がんにおけるピロリ菌のような決定的な原因がまだ特定されていません。だからこそ、日々の生活習慣の見直しと、リスクに応じた定期的な検査が何よりも重要になります。

 

  1. 生活習慣の見直し

  • 禁煙する:最も重要で効果的な予防策です。
  • お酒は適量に:深酒は慢性膵炎の原因にもなります。
  • バランスの良い食事を心がける:肉類に偏らず、野菜やキノコ類、果物を積極的に摂りましょう。
  • 適度な運動を続ける:肥満や糖尿病の予防・改善につながります。

  1. リスクに応じた定期的な検査

残念ながら、膵臓がんには国が推奨する「対策型がん検診」がありません。そのため、人間ドックなどを活用して、自ら検査を受けることが重要になります。

特に、先述のリスク因子に当てはまる方は、年に1回は腹部超音波(エコー)検査を受けることをお勧めします。検査で何か異常が疑われた場合(例えば「膵管の拡張」など)、造影CTやMRIといった、より精密な検査に進むのが一般的な流れです。

膵臓がんは発見が難しく、治療も決して簡単ではない病気です。しかし、だからといって諦める必要はありません。

「いつもと違う」と感じる体のサインを見過ごさず、ご自身のリスクを理解して生活習慣を整えること。そして、少しでも不安があれば、ためらわずに専門の医療機関に相談すること。

それが、ご自身の体を守るための、最も確実で大切な一歩です。

検査開始

当クリニックでも、膵臓を観察するのに優れた超音波内視鏡検査(EUS)を導入しています(明石市のクリニックで初)。これはCTやMRIでも発見困難な10mm前後の膵臓がんを検出することも可能です。膵臓に不安を抱えた方や興味のある方は是非お問合せ下さい。

当クリニックは膵臓がんの早期発見に尽力しております。膵臓に関するご相談はいつでも受け付けております。気になる症状やご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

明石やまだ内科歯科クリニック