【医師が解説】夏の海外旅行前に知ってほしい「A型肝炎」の怖さとワクチンで防ぐ方法

ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
JR明石駅より徒歩5分、明石やまだ内科歯科クリニック院長の山田恭孝です。
もうすぐ夏休み本番。東南アジアや海外への旅行を計画されている方も多いのではないでしょうか。
楽しい旅行の準備として、観光地の下調べや持ち物の確認は万全にされると思いますが、「ワクチン接種」について考えたことはありますか?
実は私は、これまでの診療の中で、東南アジアに旅行した若い患者さんがA型肝炎に感染し、劇症化(重篤化)して亡くなるという、大変つらい経験をしています。健康な若い方であっても、A型肝炎は時に命にかかわる病気になりえます。だからこそ、今回は海外旅行前のA型肝炎ワクチン接種について、皆さんにお伝えしたいと思います。
■ A型肝炎とはどんな病気?

A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)に感染することで起こるウイルス性の肝炎です。
主な感染経路は「経口感染」です。ウイルスに汚染された水や食べ物(生の魚介類・野菜・果物など)を口にすることで感染します。衛生環境が十分に整っていない地域では、水道水や屋台の食べ物を通じた感染が起こりやすくなります。
感染してから発症するまでの潜伏期間は平均4週間(2〜7週間)。発熱・倦怠感・吐き気・腹痛・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状が現れます。
多くの場合は自然に回復しますが、まれに「劇症肝炎」と呼ばれる非常に重い状態になることがあります。劇症肝炎は肝臓が急速に機能不全に陥るもので、意識障害や出血が起き、死に至ることもある危険な状態です。
■ 東南アジアへの旅行は要注意!A型肝炎の感染リスクが高い地域とは

A型肝炎は、日本では衛生環境の改善とともに国内感染者数は大幅に減少しました。しかしその分、現在の日本人はA型肝炎に対する免疫を持っていない方がほとんどです。
一方、世界では今もA型肝炎が流行している地域が多く存在します。特にリスクが高いのは以下のような地域です。
・東南アジア(タイ・ベトナム・インドネシア・フィリピン・インドなど)
・南アジア・中央アジア
・アフリカ・中東
・中南米
これらの地域では、屋台料理・生の貝類・清潔でない水などを通じてA型肝炎に感染するリスクが高くなります。
私自身が経験した患者さんも、東南アジアへの旅行後にA型肝炎を発症し、劇症化してしまいました。若くて健康だったとしても、油断はできません。
■ ワクチン接種で予防できます!

A型肝炎は、ワクチンで予防できる病気です。
ワクチンを接種することで体内に抗体が作られ、感染リスクを大幅に下げることができます。2回の接種を完了することで十分な免疫が得られ、さらに約6〜12か月後に3回目(追加接種)を行うと、10年以上にわたる長期の免疫が期待できます。
接種スケジュールの目安
・1回目:旅行前(できるだけ早く)/ある程度の効果あり
・2回目:1回目から2〜4週間後/より高い免疫効果
・3回目:1回目から約6〜12か月後/10年以上の長期免疫
■ 「もう夏休み中旬なので間に合わない…」と思っている方へ

「今さらワクチンを打っても間に合わないのでは?」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
まだ間に合います!
合計3回の接種が理想ですが、2回の接種でも一定の免疫効果があります。夏休みの中旬〜後半に出発を予定されている方は、今すぐ1回目を接種し、出発前までに2回目を済ませることで、旅行中の感染リスクを下げることができます。
「旅行まで時間がない」という方でも、1回接種するだけでも全く接種しないよりはるかに安心です。まずはご相談ください。
■ 夏休みだけでなく、これから海外渡航を考えている方も

A型肝炎ワクチンは、夏休みの旅行者だけに必要なわけではありません。
・修学旅行で東南アジアへ行く予定がある学生・保護者の方
・海外出張が多いビジネスパーソンの方
・留学を控えている方
・将来的にアジア・アフリカ・中南米への旅行を考えている方
いずれの方にも、事前のワクチン接種をおすすめします。特に修学旅行では多くのお子さんが一緒に行動するため、一人でも感染してしまうと周囲に広がるリスクもあります。早めの準備が大切です。
■ よくあるご質問(Q&A)

Q1:A型肝炎ワクチンは保険適用になりますか?
A:A型肝炎ワクチンは任意接種のため、原則として自費(自由診療)となります。費用については受診時にお気軽にお問い合わせください。
Q2:副反応はありますか?
A:接種部位の痛み・腫れ・発赤が出ることがありますが、多くは数日で治まります。発熱や全身倦怠感が現れることもまれにあります。重篤な副反応は非常にまれです。
Q3:A型肝炎ワクチン以外に、旅行前に接種しておくべきワクチンはありますか?
A:渡航先や旅行内容によって異なりますが、A型肝炎の他にも腸チフスや破傷風、狂犬病などのワクチンが推奨される場合があります。渡航先に合わせてご相談ください。
Q4:A型肝炎になってしまった場合、治療法はありますか?
A:残念ながら、A型肝炎に対する特効薬はありません。基本的には安静・輸液・栄養管理などの対症療法が中心となります。劇症化した場合は入院・集中治療が必要になります。だからこそ、ワクチンによる予防が最も大切です。
■ おわりに

楽しい夏の思い出をつくるために、まず健康を守ることが第一です。
「自分は若いから大丈夫」「短期間だから問題ない」——そう思っていても、A型肝炎は誰にでも感染リスクがあります。私が診てきた患者さんのことを思うと、一人でも多くの方にワクチン接種を検討していただきたいという気持ちでいっぱいです。
「旅行前にワクチンを打っておきたい」「どんなワクチンが必要か相談したい」という方は、ぜひ明石やまだ内科歯科クリニックへお気軽にお越しください。
当院では内科・消化器内科の専門医として、渡航前の健康相談にも対応しております。お電話またはWEB予約にてご予約のうえ、お気軽にご相談ください。
皆さまの旅行が安全で楽しいものになることを心よりお祈り申し上げます。