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【専門医が解説】その吐き気、大丈夫?危険なサインの見分け方と原因別の対処法



「なんだか胸がムカムカする…」
「急に吐いてしまった…」

吐き気や嘔吐は、誰もが一度は経験する身近な症状です。食べ過ぎや二日酔いなど、原因がはっきりしていることも多いですが、その裏には単なる胃の不調だけではない、注意すべき病気が隠れている可能性もあります。

この記事では、吐き気・嘔吐がなぜ起こるのかという基本的な仕組みから、ご自身でできる対処法、そして「これは危険」という受診の目安まで、詳しく解説していきます。

吐き気・嘔吐の主な原因とは?

吐き気や嘔吐は、脳の延髄にある「嘔吐中枢」という司令塔が刺激されることで起こります。この司令塔を刺激する原因は非常に多岐にわたります。

 

  1. 日常生活に潜む原因

まずは、病気とは言えないものの、日常生活でよくみられる原因です。

  • 食べ過ぎ・飲み過ぎ: 胃腸の処理能力を超えると、消化不良を起こし吐き気を催します。
  • 食中毒・ウイルス感染: 傷んだ食べ物やウイルス(ノロウイルスなど)が体内に入ると、身体はそれを排出しようとして嘔吐を引き起こします。
  • ストレス: 精神的なストレスは自律神経のバランスを乱し、胃腸の働きを悪くして吐き気の原因となります。
  • 乗り物酔い: 目から入る情報と、耳の奥(内耳)で感じる揺れの感覚にズレが生じ、脳が混乱して嘔吐中枢を刺激します。
  • 薬の副作用や妊娠(つわり) など

 

  1. 注意が必要な「病気」による原因

続く吐き気や、他の症状を伴う場合は、次のような病気のサインかもしれません。

  • 消化器の病気: 急性胃腸炎、逆流性食道炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、腸閉塞(イレウス)、虫垂炎、膵炎、胆石症など、多くの消化器疾患が吐き気を引き起こします。
  • 消化器以外の病気: 吐き気は、必ずしも胃腸だけの問題ではありません。片頭痛、メニエール病といった身近なものから、くも膜下出血・脳腫瘍などの脳の病気、心筋梗塞、緑内障など、緊急性の高い病気が原因となることもあります

【最重要】こんな吐き気・嘔吐はすぐに病院へ!危険なサイン

ただの吐き気と自己判断せず、以下のような症状が一つでも当てはまる場合は、夜間や休日であっても速やかに医療機関(場合によっては救急車)を受診してください。

  • 激しい頭痛、めまい、手足のしびれ、ろれつが回らないといった症状を伴う(→脳卒中などの可能性があります)
  • 胸を締め付けられるような激しい痛みを伴う(→心筋梗塞などの可能性があります)
  • 立っていられないほどの激しい腹痛が続く
  • 血を吐いた(鮮やかな赤色、あるいは黒っぽいコーヒーかすのような色)
  • 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
  • 頭を強くぶつけた後に、吐き気が始まった
  • 水分が全く摂れず、ぐったりしている(脱水のサイン)

症状がつらい時に…自宅でできる応急処置とセルフケア

危険なサインがない場合でも、吐き気は非常につらいものです。少しでも楽に過ごすための工夫をご紹介します。

 

まずは安静に、楽な姿勢で

  • ベルトやきつい服を緩め、身体の締め付けをなくしましょう。
  • 横になる場合は、吐いたものが喉に詰まらないよう、顔を横向きにします。食後は、クッションなどで上半身を少し高くすると楽になります。

 

環境を整える

  • 窓を開けて換気をし、部屋にこもった不快なにおいを追い出しましょう。
  • 芳香剤や調理のにおいなど、気分が悪くなる原因から離れることも大切です。

 

水分補給のポイント

  • 嘔吐直後は避ける: 吐いた直後は胃が刺激に敏感になっています。30分ほどは何も口にせず、様子を見ましょう。
  • 少量からゆっくりと: 嘔吐が落ち着いたら、スプーン1杯程度の水やスポーツドリンク、経口補水液を試します。飲んでも吐かなければ、少しずつ量を増やしていきましょう。

 

食事の工夫

  • 無理に食べる必要はありません。食欲が出てきたら、おかゆ、うどん、すりおろしリンゴなど、消化の良いものから始めましょう。
  • 1回の量を減らし、数回に分けて食べる「少量頻回食」が胃への負担を減らします。
  • 炊きたてのご飯のにおいがつらい時は、一度冷ましたものやレンジで温め直したものがおすすめです。

 

クリニックでの診断と治療

続く吐き気や原因がわからない場合は、専門医にご相談ください。

 

受診の際に医師に伝えてほしいこと

的確な診断のために、以下の情報を整理してお伝えいただくと非常にスムーズです。

  • いつから: 吐き気はいつから始まりましたか?
  • きっかけは: 何か思い当たるきっかけはありますか?(食事、ストレスなど)
  • どんな症状: 吐き気以外に、腹痛、頭痛、下痢、熱などの症状はありますか?
  • 吐いたものは: 何を吐きましたか?(色、量、食べたもの、血が混じっていないかなど)
  • その他: 既往歴、服用中の薬、妊娠の可能性など

当院で行う検査と治療

検査開始

問診や診察で原因を探り、必要に応じて血液検査や腹部エコー検査、そして専門である胃カメラ(内視鏡検査)を行います。胃カメラは、胃や食道の粘膜を直接観察できるため、胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、胃がんなどの病気を正確に診断するために非常に重要です。当院では、患者さんの苦痛を最小限に抑えるため、鎮静剤を使用した検査も可能です。

検査で原因が特定できれば、その病気に合わせた治療(お薬の処方など)を行います。脳や心臓など、消化器以外の病気が疑われる場合は、速やかに連携する専門医療機関にご紹介します。

吐き気や嘔吐は、身体からの重要なサインです。「よくあることだから」と軽視せず、つらい症状が続く場合や、今回ご紹介した「危険なサイン」が見られる場合は、決して一人で悩まず、お気軽に当院にご相談ください。

明石やまだ内科歯科クリニック