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【自分で決める医療】膵臓がん治療で見えた「QOL」と「自己決定権」の大切さ

漫画家の倉田真由美さんが明かした、映画プロデューサーであった夫・叶井俊太郎さんの死生観と、膵臓がん治療における壮絶な選択が大きな話題となっています。今回は、この事例を通して見えてくる、重病時における患者さまの「自己決定権」と「苦痛の少ない医療」の重要性について、当院の専門的な取り組みを交えながら考察します。

「死ぬまで好きなものを食べたい」— QOLを優先した対症療法の選択

叶井俊太郎さんは、膵臓がんの診断を受けながらも、標準治療である抗がん剤治療を拒否されました。その背景にあったのは、「いつでも死んでいい」「痛いのだけは嫌だ」という長年の死生観と、「死ぬまで好きなものを食べたい」という強い願いでした。

叶井さんは、この食の願いを叶えるため、胆管ステント手術や、胃と小腸を繋ぐバイパス手術といった対症療法を選択されています。特にバイパス手術の後には、実際にステーキなどを食べられるほど食欲が回復したといいます。倉田さんは、夫のこの選択を「良い選択をしてきたと私は誇りに思っています」と語り、「自分の命の責任は自分しか取れない。だからこそ、自分で選択するのが一番良い」という考えを強調されています。

医療の現場では様々な治療法が提示されますが、「これはやるけど、これはやりません」と自分で決める権利があることを、多くの人に知ってほしいという倉田さんのメッセージは非常に重要です。

専門医による早期発見と苦痛の軽減

重篤な疾患である膵臓がんは、日本人のがんによる死因の上位を占めており、早期発見を行うことで根治を目指すことが可能です。

叶井さんが強く避けたかった「痛み」の回避や、QOLを維持するための治療選択は、当院が目指す「患者さまの負担を減らす医療」に通じるものです。

 

  1. 膵臓がんの早期発見への尽力

当院では、膵臓、胆管、肝臓といった身体の奥深くに潜む病気の診断・治療経験が豊富な医師が在籍しています。

また、院長は日本膵臓学会認定指導医の資格を有しており、膵臓専門医として地域に貢献してまいります。

当院では、膵がんの早期発見に有効とされる超音波内視鏡(EUS)を導入しています。EUSは、CTやMRIでは描出が難しい10mm前後の小さな腫瘍の検出も可能であり、膵疾患の家族歴がある方や膵のう胞を指摘された方などに特に推奨される、特殊な検査です。明石市内のクリニックでは唯一当院が導入しており、兵庫県内でも3件程度しかありません。

 

  1. 苦痛に配慮した検査体制と緩和ケアの知識

叶井さんが最後まで「痛いのだけはやめて」と訴えたように、患者さまの身体的・精神的な苦痛を最小限に抑えることは、医療において不可欠です。

当院では、胃カメラや大腸カメラ、そしてEUSなどの検査において、患者さまのご希望に応じて鎮静剤や鎮痛剤を使用し、できる限り苦痛の少ない検査を心がけています。特にEUS検査では通常鎮静剤を使用するため、眠っている間に検査が終わることがほとんどです。

院長は、「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修」を修了しており、がん治療のすべての段階で、患者さまの苦痛や生活の質(QOL)に配慮した診療を提供するための知識を有しています。

自分で選ぶための、丁寧な「対話」と「情報提供」

倉田さんは「知らないと『先生にお任せします』となってしまいがちだが、それが必ずしも本人にとって良いとは誰にもわからない」と述べ、自分で決めることが後悔を少なくすると指摘しています。

当院では、患者さまが自ら最良の選択をするためのサポートを重視しています。それは、叶井さんのような重篤ながん治療の選択だけでなく、日々の診療や検査においても同様です。

例えば、健康診断で「膵のう胞(すいのうほう)」が見つかったとします。膵のう胞には、がん化するリスクがあるものと、そのリスクが極めて低いものがあります。 私たちは、ただ「要精密検査です」と伝えるだけでなく、

  • なぜ精密検査(EUSなど)が必要なのか
  • 精密検査を行わずに経過観察を選択した場合のリスクは何か
  • もし精密検査で”がんの疑い”が強まった場合、どのような治療の選択肢(手術、経過観察など)があるのか
  • それぞれの選択肢のメリットとデメリット(身体的負担、QOLの変化など)

といった情報を、専門医の知見に基づき分かりやすくご説明します。

明石やまだ内科歯科クリニック