【日本ヘリコバクター学会 H. pylori感染症認定医が解説】胃のトラブルの原因はこれかも?「ピロリ菌」の基本から除菌治療まで!

こんにちは。
JR明石駅より徒歩5分、明石やまだ内科歯科クリニック院長の山田恭孝です。
胃痛、胃もたれ、胃潰瘍、そして胃がん…。
これらの胃の病気に深く関わっているのが「ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)」です。1982年にオーストラリアの医師たちが胃の粘膜から培養することに成功して以来、ピロリ菌と胃の病気との関係が次々と明らかになってきました。
今回は、ピロリ菌の正体から、感染ルート、引き起こされる恐ろしい病気、そして当院でも行っている除菌治療についてお伝えします。
1.ピロリ菌の正体とは?なぜ強い胃酸の中で生きられるの?

ピロリ菌は、胃の粘膜に生息するらせん状の形をした細菌です。一方の端に4〜8本の「鞭毛(べんもう)」と呼ばれる毛が生えており、これを動かして活発に移動します。
通常、胃の中には強い酸(胃酸)があるため、普通の細菌は生息できません。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という特別な酵素を持っています。この酵素を利用してアンモニアを作り出し、自分の周囲をアルカリ性の環境にすることで胃酸を中和し、胃の粘膜の表面(粘液の中)に住み着くことができるのです。
2.どうやって感染するの?

感染経路はまだはっきりとはわかっていませんが、大部分は口を介した感染(経口感染)だと考えられています。
ピロリ菌の感染には乳幼児期の衛生環境が関係しており、上下水道が十分に普及していなかった時代に生まれた団塊の世代以前の方で高い感染率となっています。
一方で、衛生環境が整った現代では若い世代の感染率は著しく低下しており、欧米とほとんど変わらないレベルになっています。そのため、現代の生活において過度に神経質になる必要はありません。
3.放っておくと危険!ピロリ菌が引き起こす病気

ピロリ菌に感染すると胃に炎症が起こりますが、多くの人は自覚症状がないまま生活しています。しかし、この感染による炎症が長く続くと、「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎(慢性胃炎)」となり、さらに進行すると胃粘膜の胃酸を分泌する組織が消失する「萎縮性胃炎」になります。
一部の患者様では、この状態から胃がんへと進行してしまうことが報告されています。実際の調査によると、10年間で胃がんが発生した人の割合は、ピロリ菌に感染していない人では0%だったのに対し、感染している人では2.9%に上りました。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者様の約80〜90%がピロリ菌に感染しており、潰瘍の発症や再発に深く関係していることがわかっています。
そのため、関連疾患の治療および将来の胃がん予防のために、ピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を受けることが強く勧められています。
4.ピロリ菌を退治する「除菌療法」とは?

除菌療法とは、お薬を服用することでピロリ菌を退治する治療法です。具体的には、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と、2種類の「抗菌薬」の合計3剤を同時に、1日2回、7日間連続で服用します。
正しくお薬を服用すれば、1回目の治療(一次除菌療法)の成功率は68〜92%といわれています。もし一次除菌でピロリ菌が退治できなかった場合でも、2種類の抗菌薬のうち1つを別の薬に変えて再度治療を行う「二次除菌療法」をきちんと行えば、ほとんどの場合で除菌が成功すると報告されています。
5.治療中の注意点と副作用について

除菌治療を成功させるためには、以下の点に注意する必要があります。
・絶対に自己判断で薬をやめない
確実に除菌するため、指示された薬は必ず飲み切ってください。自分の判断で服用を中止すると、除菌に失敗するだけでなく、治療薬に対して「耐性(薬が効きにくくなること)」を持ったピロリ菌が現れる恐れがあります。
・副作用への対処
治療中は、軟便や下痢、味覚異常(食べ物の味がおかしい、苦味を感じるなど)、アレルギー反応(発疹やかゆみ)などの副作用があらわれることがあります。
軟便や軽い下痢、味覚異常の場合は、自分の判断で薬を減らさず、残りの薬を最後まで飲み続けてください。
ただし、発熱や腹痛を伴う下痢、血便、または発疹が出た場合は、直ちにお薬を飲むことを中止し、当院へご連絡ください。
・二次除菌中は禁酒
特に二次除菌療法の間は、アルコールの摂取を避ける必要があります。
なお、除菌に成功した患者様の少数に、胸やけなどの「逆流性食道炎」が発生することがあります。これは除菌によって低下していた胃酸の分泌が正常に戻ったための一時的な症状であり、多くは軽微で無症状のことも多いです。
6.当院でのピロリ菌検査と胃カメラ検査

ピロリ菌の検査には、大きく分けて「胃カメラ(内視鏡)を使う方法」と「使わない方法(採血、検尿、呼気検査、検便)」があります。胃カメラで行う方法は、採取部位によっては偽陰性となることがあります。そのため当院では胃カメラによる観察でピロリ菌の有無を検討し、感染が疑われた場合は血液検査等による感染の有無の確認を行うことを推奨しています。
当院では希望者には鎮静剤を使用しウトウトしている間に終わる、苦痛の少ない胃カメラ検査を行っております。胃カメラを行い現在の胃の粘膜の状態(萎縮性胃炎や胃がんが隠れていないか)を直接目で見て確認できるため、より確実で安心です。
そして最も重要なのは、すべてのお薬を飲み終えた後、4週間以上経過してから「本当に除菌できたかどうか」の判定検査(尿素呼気試験など)を必ず受けることです。
まとめ:胃がん予防のために、まずは検査を

ピロリ菌は胃がんや胃潰瘍の重大なリスク要因ですが、除菌療法を行うことで新しい胃がんが発生する確率を減らしたり、潰瘍の再発を抑えたりすることができます。
胃の不調が気になる方、また一度も検査を受けたことがない方は、これを機にぜひ当院へご相談ください。
当院ではピロリ学会認定医、内視鏡専門医が丁寧で詳細な検査を行っています。
※除菌が成功した場合でも、まれに胃がんなどを発症することがあるため、除菌成功後も定期的な胃カメラ検査(1年に1回程度)を受けることが大切です。